髪や爪と違って、歯は一度でも削ったり抜いたりすると、元にはもどりません。そして、どんなに高度な治療や高級な詰め物も「生まれ持った歯」には敵わないのです。ですから当院では「できるだけ削らない、抜かない」ということを方針として、虫歯治療を行っています。
当院では、「Co段階の虫歯は削らず、それ以上進行しないように予防する」という方針で、“生まれ持った歯を大切にし、可能な限り残す”ことを重視しています。なぜなら、少し削って形を変えるだけでも歯が傷むので「歯を削ること」はそれ自体がリスクにもなると考えているからです。
ただし、どうしても歯を削らなければならない場合には、その必要性をご説明した上で、虫歯になっている部分を最小限の範囲で削ることで、「虫歯を残すことによるリスク」を排除します。この場合は「治療後のメンテナンス」が大切ですので、定期検診などにはしっかり通っていただきたいと思います。
虫歯の進行状態と治療方法
●Co(シーオー:初期う触)
う蝕とは虫歯のことです。Co(初期う蝕)の段階では、歯の表面を覆うエナメル質が溶け始めて虫歯が始まっています。しかし、まだ穴があいたり、黒くなったりしていない段階なので、フッ素入りの歯磨き剤でしっかり歯みがきすれば、エナメル質が溶けた部分を再石灰化させることが可能です。
●C1(エナメル質う触)
C1(エナメル質う触)は、虫歯菌によって歯の表面を覆っているエナメル質が溶かされ、小さな穴ができた状態です。しかし、象牙質までは達していないので、痛みはありません。治療は、虫歯部分を必要最小限削って、保険適用の範囲内の白い詰め物をすることで完了します。
●C2(象牙質う触)
C2(象牙質う触)は、エナメル質の下の象牙質まで虫歯に侵され始めている状態です。冷たいものや甘いものがしみることがあり、触ると痛みを感じるため、治療の際には麻酔が必要です。虫歯の範囲が小さければC1(エナメル質う触)同様の治療で済みますが、虫歯が歯の深部にまで広がっている場合には、麻酔をして虫歯になっている部分を削り、型取りをし、製作した詰め物を装着します。
●C3(神経まで達したう触)
C3(神経まで達したう触)は、虫歯菌がエナメル質と象牙質を溶かして神経まで到達した状態です。激しい痛みを感じる場合が多く、さらに進行して神経が壊死してしまうと、細菌が歯の根の周囲で炎症を起こして膿が出たり、歯ぐきが大きく腫れたりします。
C3レベルにまで悪化しているケースでは、根管治療(こんかんちりょう)が必要となります。歯の根の中で歯髄(神経と血管)がある部分を根管といい、歯髄を除去した後に、根管内の清掃や洗浄、消毒などを行い、根管内の痛みや炎症などを抑える治を根管治療といいます。麻酔をして、根管治療によって壊死した神経や膿を取り除き、歯の根(根管)の中をきれいにしてから被せ物をします。
●C4(残根状態)
C4(残根状態)は、歯のほとんどがなくなってしまい、根だけが残っている状態です。ここまで虫歯が進行すると抜歯するケースが多くなりますが、まだ治療可能な歯質が残っていたならば、C3(神経まで達したう触)のケースと同じように根管治療を行ってから被せ物をすることで抜歯を避けることができます。