1番短い「奥歯」の寿命
厚生労働省の調査によると、歯の平均寿命は約50~65年。
その中でも「奥歯の 寿命」が最も短く、前歯より10年以上も早く抜けてしまいます。
日本人の平均寿命(2013年)は男性が約80歳、女性が約86歳なので、1番短い大臼歯の場合、10歳で生えたとすると、体の寿命とは20年以上の差があることになります。
よくある!歯を失ってしまうパターン
小さな1本の虫歯から始まって、奥歯を失ったり、歯槽膿漏により奥歯を次第に 失っていく典型的なパターンを説明しましよう。
- 一見頑丈そうな大きな川の堤も小さな穴から決壊が始まり、広範囲の水害の原因となることがあります。人間は虫歯を持って生まれては来ません。歯を失うよくあるパターンは小さな虫歯が現れるところからはじまるものなのです。そして写真の①②③の順に歯を失っていくのです。
- 虫歯を引き起こす虫歯菌(ミュータンス菌)、甘いもの、歯ブラシの不足などによって、小さな虫歯はさらに大きくなっていき、歯科医院で治療を受け、歯に冠をかぶせるようになります。
- 冠自体は金属なので虫歯にはなりませんが、歯の根元の冠の縁からさらに虫歯が進むと、抜歯せざるを得なくなります。 (冠の縁は精密に作ったとしても、わずかな境目があるのです。小さな虫歯菌から見たら、その隙間は十分大きな活動スペースになります。)また歯槽膿漏などの歯周病も歯の根元の周囲から進行していきます。
- 歯を抜いた場所①でも食べ物を噛めるようにするためには、両側の歯を削り土台にして、橋をかけて義歯を装着しなければなりません。この場合、インプラントを勧められる場合があります。ただしインプラントが炎症を起こして、抜けてしまうと、顎の骨が凹んでしまい、取り返しのつかない問題が起きることがあります。
- ブリッジと呼ばれる3本組の義歯を入れます。この場所は、2本の土台の歯で3本分の働きをしなければなりません。この土台となる2 本の歯は負担が大きくなり、ウィークポイントになります。
もし2本の土台の歯の前方の歯②を失った場合、ブリッジは4本組の義歯に作り直しになります(黄色矢印)。 失った歯の前方のとなりの歯を削り、2本の土台の歯(赤矢印)で4本組の義歯(ブリッジ)を入れます。しかしこの土台の2本の歯は、さらに大きなウィークポイントになります。
ここから、出し入れ式の入れ歯のご説明になります。
- 上部★ マークの写真の左の写真で、もし1 番後ろの歯③を失うと、固定式の歯、ブリッジはできなくなります。
- 患者さんにとって初めての入れ歯は、慣れるのが大変です。奥の方にバネをかける歯がないので、不安定です。 患者さんの指の力で、入れ歯を装着したり、外したりしますが、噛む力の方が指よりも強いので、食べているときに浮き上がることがあります。 特に保険の義歯は、バネの部分がテコになって、歯を抜くような力が加わりやすいのが欠点です。
- 入れ歯のバネがかかる歯の寿命は短い傾向があります。そして歯の欠損はさらに拡大していきます。(ここでインプラントを入れて、入れ歯にしないように勧められる場合があります。歯磨きをしっかりできない人がインプラントを入れると、炎症を起こしてしまいます。高齢者になって、しっかり歯磨きができない状態が発生することまで考えて、治療方法を選択すべきです。)
- 奥歯3本(①②③)を失うと、矢印のように歯がある反対側にまで腕を伸ばして、バネをかける必要があります。しかし保険の入れ歯は違和感が大きいので、対処に苦心します。当院のテレスコープ義歯は、歯磨きしやすく、長持ちして、よく噛むことができます。お勧めします。