日常、食事をしたり話をしたりするのに必要な歯は、手や足や臓器と同じように人体の構成に不可欠なパーツです。
歯を失った場合、義歯(入れ歯)はその機能を回復させるために必須のものです。義歯は「あればいい」「使えればいい」というだけではなく、一人ひとりのお口へのフィット感が高く、咀(そ)しゃく(噛むこと)が快適であることが重要です。
義歯(入れ歯)が「合わなくて外れやすい」「使うと痛い」「うまく噛めない」ということでは、機能を回復させるために作った意義が半減してしまいます。当院では、とにかく「しっかり噛めること」を第一に考えて義歯(入れ歯)を製作しています。
人間は生きていくために、実にたくさんのいろいろなものを食べています。
①通常、人は1年間に約500キログラムもの食べ物を食べています。
(1回の食事で500グラム食べるとすると1日1.5キログラム 1.5キログラム×365日= 547.5キログラム)
②人はとても硬いものを食べることができます。
奥歯で思いっきり噛むと数十キロもの力が出ます。
③とても熱い食べ物、冷たい食べ物を食べています。
熱いお茶や味噌汁(80度から90度)から、とても冷たいアイスクリーム(-5度)の物を食べています。
④強い酸性の食品からアルカリ性の食品を食べています。
私たち日本人は強い酸性の食品からアルカリ性の食品まで、日常的に食べています。梅干しやレモンなどはpH2程度の強酸性で、ほうれん草はpH10、こんにゃくはpH12程度の強アルカリ性です。
歯の表面の成分であるエナメル質はリン酸カルシウムでできていて、pH5.5以下の酸性の液体に漬けるとエナメル質が溶け始めてしまいます。
溶けたエナメル質は唾液により再石灰化し修復されますが、炭酸飲料や酸っぱいものをよく口にして歯磨きをしない人は、唾液による再石灰化よりもエナメル質の溶けるスピードが速く、エナメル質の下にある象牙質が露わになり、冷たいものがしみるようになる酸蝕症(さんしょくしょう)になる恐れがあります。
⑤塩分の強い食品(醤油、塩漬け)を食べています。
金属は塩分を多く含む海水や海風に弱いことが知られています。食品は酸性やアルカリ性だけではなく塩分が多く含まれているものもあります。
義歯(入れ歯)の材料には、お口の中のこのような厳しい環境に耐えられる物質を吟味して、歯科用の金属が開発されてきました。歴史的にみても現代でも金合金が最も耐久性があり、体に優しく扱いやすい金属材料です。
金は希少で高価であるために、代用の金属が使われてきました。近年はセラミックやレジン(プラスティック)やハイブリットレジンがたくさん使われるようになってきました。しかし現時点では、義歯(入れ歯やブリッジ)にはどうしても金属材料が必要になります。